語りたがり女が語る、少年忍者22人

オタク女が少年忍者のメンバー個人への印象を語る連載

『川﨑皇輝』あの夏のロミオへ

シェイクスピアが生んだ、世界一有名な恋愛戯曲『ロミオとジュリエット』。

我らが少年忍者の学級委員長こと、川﨑皇輝くんが恋愛ストーリーの舞台に主演、ましてあの有名な『ロミオとジュリエット』の”ロミオ”を演じると聞いて、私はとても心が高揚した。(そのジュリエット役が大好きなモーニング娘。の卒業メンバー・飯窪春菜ちゃんと来て、私はこんな幸せな事があるのかとひっくり返った)情報が徐々に公開され、かの有名な鴻上尚史さんが作・演出であり、ロミジュリをベースとした新解釈劇『ロミオとロザライン』の詳細が明らかになるにつれ、私はあるひとつのことに気付いた。鴻上さんの、ロザラインに対しての並々ならぬ思いだった。鴻上さんが過去に著した本の中に、『ロミオとジュリエット』について解説した文章があり、その話題を占めていたのは、ロザラインについてだった。鴻上さんにとって、ロザラインという女性はとても大切で、大事にしてきた、究極の存在なのでは無いかと私は思った。そしてそのロザラインにスポットを当てた舞台が実現し、ロザラインが愛するロミオを、我らが川﨑皇輝くんが演じるのだ。衝撃だった。目眩を起こしそうなほど、私はそのときめきに酔いしれたのだ。


私の周りの大抵のジャニオタは、『川﨑皇輝』と言う名前を知っていた。何なら『川﨑皇輝』と書いて”優等生”と読むかの如く、皆彼には良い子で真面目というイメージがあると言っていた。それは私たち少年忍者担の中にもある川﨑皇輝くんへのパブリックイメージであり、彼なら初主演舞台も立派に卒なくこなすだろ気持ちの元で舞台に足を運んでいた人は多いと思う。”18歳の男の子の初主演舞台”では無く、あくまで”川﨑皇輝くんの初主演舞台”という認識なのだ。無自覚の期待の中で、7月の新宿の劇場で『ロミオとロザライン』の幕が上がった。

 

そこには、プレッシャーをものともせず、好奇心に満ちたキラキラした瞳で堂々と舞台に立つ川﨑皇輝くんがいた。


私がときめきに酔いしれてずっと待ちわびていた『ロミオとロザライン』の幕が上がった。舞台に立つロミオは、背筋の伸びた立ち姿が美しく、盲目的で、熱くて、若くて、愛の前では従順だった。ロミオを、またロミオを演じる役者の北山を演じる川﨑皇輝くんを今でも覚えている。忘れられないほど、胸を焦がされたのだ。ロミオが求愛するヒロインにはジュリエットとロザラインがいて、舞台を見ている最中、私はロザラインに感情移入をしていた。ロザラインに自分の何かを重ねたというよりは、無意識に、自分にはジュリエット側になる人生は無いと思ったのだろう。ロザラインに自分の気持ちを乗せたまま迎えたラストに、私は涙が止まらなかった。とても辛かった。1度は自分に好意を向けていた、川﨑皇輝くんの姿をしたあのロミオが、北山くんが、別の女性と見つめ合って幕が降りてしまったことが。私はそれほどまでに、あの夏に見たロミオに胸を焦がして涙を流したのだ。


私は舞台期間中、なぜか松田聖子の『SWEET MEMORIES』を聞きながら劇場に向かっていた。たまたまその時の自分の中の流行りで聞いていたものの、今思えば、これほどあの舞台の思い出に合うBGMは無かった。『ロミオとロザライン』を思い出して、切なくなる気持ちは”なつかしい痛み”であり、うだるように暑かった7月の新宿に”時間だけ後戻り”する。川﨑皇輝くんの姿をしたロミオに、北山くんに恋をして失恋をしたあの夏は、私にとっての、”甘い記憶”なのだ。